無言劇
由木名緒美
育まれた大地は哀しみに暮れ
あなたの幸せを乞う、と
腐敗した果実を土葬にいだく
還れない連鎖がある
祝し祝される転生の輪を閉じ
静かに響く余韻の産声を預ける
生き写しの影が光となる時
私は諦念の祈りを聴いた
真実は近過ぎるゆえに眼窩に宿り
声の主は居所を明かさない
切り裂かれた白布
その眩しさだけが手掛かりを灯し
導かれれる先に待つのは断崖の花
染まれば染まるほど
頬は橙に夜闇を孕み
昇れば昇るほど
空は地平へと墜落し
花弁は手の平をすり抜けて哀しげに微笑う
腐敗は破裂に期を熟す
何処に逃れようと
誰を逃そうと
幕は開かれていた
物語の帰結を黒子が叫ぶことを
何時悟るべきだったのだろう
死にゆく恋人達さえ袖に消えて
残るのは泣けない紙吹雪ばかり
残るのは溶けない解ばかり