日記、手紙のように、ではなく、
墨晶

 
第一楽章 (/交響曲第四番 六月、一九八七年、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏、レナード・バーンスタイン指揮、グスタフ・マーラー作曲 ) は、あなたに聴取されており、また、あなたを背に乗せてゆれているのは古い木馬である。その状況が、今だ。


キッチンが物色される蓋然性はあなたの空腹感に依るものであったが、それは少々だった。冷蔵庫内に忘れられていた薄切りのハムとチーズとレタス数枚が、グリルで焼かれ、一方には芥子バターを一方には芥子マヨネーズが塗られた二切れの食パンに挿まれたものがあなたのサンドウィッチである。もたらされた大いなる満足は、運良く未だ気が抜けておらずボトル三分の一ほど残っていたラムブルスコ、この際使用したものがありあわせのものだけだった事、無論かけら程も期待されず想定され得なかったが、しかし調和していたそれらの味に関する事、等に依るものである。


不意に思い出されたひとことのように
木綿ガーゼのカーテンはひるがえ


西へ
地表を移動していった晩鐘のざわめきの速度で、
オレンジ、ピンク、ターコイズの大気は
深い葡萄色に変わっていく。
 
 
 


自由詩 日記、手紙のように、ではなく、 Copyright 墨晶 2019-09-10 21:09:00
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