「魚が見る夢」という詩
村乃枯草

海の底に住む魚は夢の中で
二本脚でアスファルト路を歩き
腕で電車の吊革に掴まり
耳で降りしきる雨の音を聞き
口で愛の言葉を語る

短い睡眠時間の中で
魚は霊の長となり
歩き 掴み 言葉を解し
我が身に訪れる将来に夢を見る

見えた夢は
 ビルとなり
  法律となり
   哲学となり
  世を動かし
 地球を変え
宇宙に届く

そして魚が眠りから覚めると
数十億の人生は泡となって消える

という詩を電車の中で読んだ男は
あくびをして
揺られながら短い睡眠をとる
今日も何もなかったと家に着いた男が
玄関を開けると家には海水が満ちていて


自由詩 「魚が見る夢」という詩 Copyright 村乃枯草 2019-09-01 15:38:10
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