胃袋と子宮
こたきひろし

休日の公園で
フリーマーケットやってた

出店者達は思い思いのガラクタ並べて
言葉巧みに付加価値を強調していた

自然に囲まれた場所
物見胡散に人が集まってた

好きで詩を書いてます
手作りの詩集だけど
買って下さい

若い女性がそんな言葉を文字にして
客をひいてた
しかし
無造作に並べられた詩集に
誰も足を止めなかった
手を伸ばさなかった


一人の男は気になって
詩集を一冊手にとって頁をぺらべら捲った

でもその男が本当に気になったのは
売っている若い女の方だった
目立たない地味な服装をして
暗い顔つきしていたが
それは身をまもる為のカモフラージュ
かもしれなかった


中身はいい女の類いだと男は見抜いた
男は言った
俺が詩集ごとあんたを買ってやるよ
それは配慮に欠けた実に乱暴な申し出に違いなかった

金に困ってるんだろ
そうでなければ
ここで詩集なんて売るわけないだろう
そんなもの誰も買うわけないんだから


それを聞いて
若い女性はきょとんとしてしまった

男はかまわず言葉を続けた
買ってやるから
売ってくれないか
それがあんたが売ろうとしている
詩集の付加価値なんだからさ


自由詩 胃袋と子宮 Copyright こたきひろし 2019-08-18 09:12:33
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