古民家見学
DFW


隠れ家のような住み処から生まれるものたちの
軽やかなでんぐりがえし
ひんやりとした土間をころがり 野原に消えていくものたち

わたしの貧しさが豊かさにてらされたものではなく 煤けた壁やゴザの生きもののような手触りにてらされるものとしてみえてくる

櫛の歯がぽつぽつとこぼれていったような あどけないすき間が
家のそこここにあり

木枠のずれた囲炉裏のそばで祈りが揺れていて

ヤマブキが色づく村の穏やかな野辺送りのように 美しい手仕事の息づかいが やさしい風に運ばれて薄れていく


あらかじめ与えられた場所に 遅れて訪れるような空間は この家にはないようにおもえて

みえないものがたりを語りはじめるものたちの物音のするほうに向けた
わずかな瞬きに
切り取られた静寂だけがきこえてくる


風通しのよい壁や屋根から あどけないすきま風が吹きつけて よい隣人をつくっていくそこここには

雷の匂いのする村人たちがいまも笑っている



自由詩 古民家見学 Copyright DFW  2019-08-03 20:19:34
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