【批評ギルド】『煌く銀河を駆け抜ける僕の銀河鉄道』宮森 竜
Monk



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題名がいい。期待感がある。駆け抜けるっていうのが宇宙がコスモでエクスプ
レスって感じでダイナミックなものを期待したなぁ。煌くって、かがやくって
読むのかな、たぶんそうだ。
ともあれそういう期待感を持って読んだ作品なのだが、中身はちと違う。高音
エキゾーストノートを奏でながら駆っとんでるわけではなく、ガタンゴトンで
ある。駆け抜けるガタンゴトン。おい、駆け抜けてねーよと思うがそれは置い
といて。
なんか乗り合いバスみたいだな。乗り合いバスと人のいい車掌さんだな。「い
やぁ、こっちも大変なんですけどね。まぁバスが走ってる以上は私もがんばん
なきゃなーみたいなね。あははー」と頭かいてそうだな車掌。車掌じゃなくて
運転手か。この乗り合い銀河鉄道を運転してる人=僕、であってこのお話自体
が夢のお話、という展開なのだがこのお話が夢オチであることは別にわるくな
いと思う。かえってそこにおもしろみがあった。あとで書くけど。ただ夢オチ
に至るにあたりどうもイマイチ感が漂うのは単純に文章の書き方じゃないです
かね。最後に一行

> 僕はよく、そんな夢を見る

と来るのだがこれは唐突だし、いきなりそこで話をカットされたように見える
からおいおい夢で終わらせられちゃったよーと思うんじゃないか。このお話
だったら一行目に「こんな夢を見る」と書いてもおもしろみは損なわれないと
思う。夢オチでびっくりして楽しむ作品じゃないと思う。

で、だね。これは夢なのでベッドで眠ってる「僕」がいて「僕」の馳せる夢は
宇宙銀河で電車を運転してる。リモートコントロールっぽいな。寝室に居なが
らにして遠い宇宙でリモートコントロール。二つの異なる座標系を二つ画面に
並べて見るような感じで読むといいんじゃないですかね。
で、おもしろいのは、夢なんだからもっとかっこよく美化したりスペクタクル
ロマンしたりすればいいのに、ベッドの「僕」も銀河鉄道の「僕」も妙に同調
してるような感じを受けた。実際その夢の銀河鉄道もガタンゴトンだったり、
ズルする流星を「しかたないなぁ」と眺めてたり、終点も星たちが望んだ場所
を終点にしますとか、この「僕」はきっと現実の生活でも似たようなことして
るぞたぶん。飲み会行って「二次会行く?」ときかれたら「どっちでも」と言
いそうだよ。「夕ご飯何にする?」に対しても「君の食べたいものでいいよ」
と言うよ。眠ってて夢の中で遠い銀河にいるのに本人はそのまんま普段と変わ
りないところがおもしろかったな。いい人なんだろうな、この人。

おもしろかった部分はあるけどもそれは作者が狙ったものではないかもしれな
いし、そもそもこの作品はどこを楽しむものなのか作者の意思があまり感じら
れないのでそのへんがよくないと思う。夢オチだから弱いのではなくて、どこ
を見せたいのかはっきりしていないから弱いんじゃないですかね。とりとめの
ない夢の話を、とりとめのないままに話したような感じでした。



散文(批評随筆小説等) 【批評ギルド】『煌く銀河を駆け抜ける僕の銀河鉄道』宮森 竜 Copyright Monk 2005-04-02 15:44:21
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