水鳥
田代深子
指でつなぎとめ
奥にひろがるはずの
水をかくした葦の
叢で
わらい戯れてひそみ
その口をふたぎあって
ちいさな音に身を寄せ
ぬくもる鳥となった
あたたかい日に歩こう
の約束は遠くからの
寒空が隔つ遠くからの
けっして
叶わないだろう
と知ってとり交わす
はかない文字のようで
指をきつくしめた
はかなさに冷たく
石となってしまうなら
つないだままそのまま
の骸で
ほかの名を刻まれて
こまやかな震えよ
声よ
風化する石の文字より
奥にひろがる水へ
溶けてくれ
葦の叢にぬくもる
鳥であったあかし
2005.4.2