代償行為をやろう
竜門勇気


真夏になる前に
逃げてきた場所で
やらなきゃだめだ
首に手をかける
君と二人

汗ばかり
動いてる
匂いがする
君のやつと
僕のやつ

混じってしまったところと
別々のところ
まるで違う匂いだ
少しだけ早いんだ
蝉の鳴き声が
途切れて聞こえた

6月とかは7月とかの出来損ない
半端な季節じゃないと
鈍りそうだからさ

汗だけが
この部屋で
動いてる
匂いがする
君の息と
僕の息

今日
何を食べてきたのか
何を飲んだのか
わかるくらい
近くにいる
お互いの瞳が
よく見えてる
見えすぎて
なんだか世界が素晴らしいものに
思えてしまうけど
今日、これでおしまい
ああ、あまりにも君の指が細くて笑ってしまう
僕は靴紐を解いて渡す
これなら
たくさんの力はいらないから

なんで。
笑いながら君は泣く
なんで、こんな無意味がここに?
僕もわからないし
夏が始まっちゃだめなんだって
君が言ったから
僕はそれに反論するための
持ち物が一つもなかったから
なんで。
僕も聞く。なんでなんだ?
どっちでも良かったんだ僕は。
君と最後までいれればそれで

君は僕の手を引いて
缶コーヒーを二つ買って逃げるようにして帰った
僕はたくさんのことがわかった
だけどそのうちひとつくらいしか理解できない
手の中にある缶コーヒーが
まだ彼女をつなぎとめている
ポケットにゆっくりと仕舞ってあるき出す
これが僕から奪うものと
与えるものについては
まだ一人じゃ決められない



自由詩 代償行為をやろう Copyright 竜門勇気 2019-07-13 23:56:54
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