22年間 詩なんてものは書いたことなかった

22年間詩なんてもんは書いたことなかった
というのは嘘だ。

こんなことがあった。高校生の頃の話。

一年間の間に何度も、担任が 「次の作品展どうする?」と聞いてくる。
私は 「今回は、見送ります」と、毎度のことながら答える。

 「やれば出来る子、なんて言葉は
  小学生の頃から聞き飽きるほど聞いたよ」

成績は良いほうではなかった。クラスでも落ちこぼれの部類に入る。
そのためか、クラスでは3年通して副委員長に選ばれた。
副、なんてついている ずっと中途半端な立場だった。

 「何かしないと示しがつかないって言われても・・・」

成績が悪い、という自覚はあった。でも勉強はしなかった。
若さとは無限の可能性を秘めている。
こんな言葉は嘘だ。
勉強をしても無理なのだ。
限界があるのは、中学生の頃にすでに気づいていた。

校内でイベントがあった。文化祭のようなもので、クラスの代表が何か作品を出す。
評価もつけられ、一位○年○組 と、イベント終了後には発表される。
私は絵を描いた。
得意、と言うほどでもないが絵を描くことは好きだった。
しかし何て皮肉か 絵を描くのがそれほど好きではない同級生の作品が選ばれてしまった。
私にとってとても残念なことだった。
例えるなら 普段は学習面で良い成績を残せない児童が、運動会のときにこそ本領を発揮し 見事一等賞をとれるかも、という滅多にないチャンスを逃したような気持ちに似ていた。
その絵に添えた「詩」のようなフレーズを「詩」として発表してみてはどうか、と担任が提案し、私は言われたままそのようにしてみた。

 「本当はね 意味なんてなかったんだ」

イベント終了後、順位が発表された。
絵が好きではない男子生徒のクラスが1位になっていたので、もう結果に興味はなかった。
「詩」は新しい試みだったそうだ。
私のクラスは特別賞、なんていう どうでもよい くだらない賞を受賞した。
その時、何を書いたのか覚えていない。正直言えば 意味なんてなかった。
頭の良くない高校生になら口汚い言葉を持ってくればウケがいい、だとか 意味不明な言葉の羅列で格好良いと判断される、ということだけは理解していた。

後輩が学校帰りの私のところへ走り寄ってきて
「先輩の書いた作品、感動しました」
なんて馬鹿げたことを平気な顔して言っていた。

 「詩なんてものは22年間書いたことなかった、というのは嘘だ」

詩を書いたのはその時が初めてだった。
正確には 「詩」ではない。
ちゃんと作品として書いた「詩」ではない。
しかし「詩」と判断された。

 「詩という表現を今までとらなかったというほうが正しい」

私はそのわずか5年後に「詩」を書きたい、と思うようになった。
繰り返すが、私は成績が良いほうではなかった。
基礎学力もなければ、読解力、表現力、知識、技術、全てにおいて ど素人だ。
自分自身にだけわかる言葉でも書いた。
熱いメッセージを込めても書いた。
どうにもうまくいかない、と悩みながらも書いた。
面白半分にも書いた。
皮肉も書いたし、嘘も書いた。
妄想も書いたし、理想も書いた。
ある時は 私ををもっと知って欲しい、と思って書いた。
ある時は 自信を持って書いた。
ある時は どうにもならない悲しい気持ちをぶつけて書いた。
不器用ながらも真面目に書いた。
ウケを狙ってふざけて書いた。
格好良いと勘違いしながら書いた。

 「理解されなくてもいい、なんて嘘 もっと知って欲しい」

私の書いたものを 理解できない、と思われることもあるだろう。
この人は何てうまく表現するんだ と、他の方の書かれた作品を読んで感動する日々だ。
自分には向いてないのではないか、と悩む。
でももっとぶつけたいんだ、正直言えば。
読んだ作品の解釈が違うことがある。それは誰にでも起こり得ることだ。
誰かの作品を読んで
まったく駄作だな、と笑いたくなることもある。
私ならこう書くけどな、と欲張った負けたくない気持ちも出てくる。
どうでもよい言葉を書き連ねられたものもある。
リズムが良くて好きになることもある。

 「こんな私は詩を書く人間として相応しいのか、など愚問だ」

好きで絵を描いていた。
技術はない。
好きで詩を書きたい、と思う。
技術はない。

 「若さとは、無限の可能性を秘めている なんて嘘だ」

限られた中では可能性があるような気がしている。
その限られた中でできることがないか日々模索している。
私が生きた証明として残したい言葉がある。
というより

私が生きている限りは詩を含めたいろんな表現方法で「言 葉メッセージ」を残してゆきたい。
だめかな?


散文(批評随筆小説等) 22年間 詩なんてものは書いたことなかった Copyright  2005-04-01 22:57:39
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