ペンペンペチン
末下りょう

よみちゃんの従姉妹のみよちゃんの盗撮がはまちん先生の愛のムチを蛇に変えて理科室に追いやった放課後

体育道具をかたづけてるぼくとよみちゃんだけのグラウンドに大人びた喘ぎ声が響き渡って油蝉とツクツクホーシが鳴きやむと放送室の窓からカーテンと踊る火が揺らめいた 

通学路の秘密の抜け道の禅寺でオリバーストーン似のお坊さんが他人の肩ペチンするの暴力じゃんってゆとりの娘に言われた昨夜の親子ゲンカを思い出してエアペチンしそうになってる感じをじゃじゃ猫がみてた 

親にしかお尻ペンペンされたことない子ってせつないねってよみちゃんが言う。親にもお尻ペンペンされたことない子ってかなしーねってよみちゃんがまた言う。親のいないよみちゃんが言うからぼくはよみちゃんの太ももをすごく叩いて赤く腫らす。

いつも買い食いする駄菓子屋の効かない扇風機としろくまと遅い蚊

暴力をふるうこととふるわれることとが混ざりあった暑さがセロテープで補強した薄いガラス戸をえんえんと震わせる放課後 暴力が夏のふたりの季語になる


自由詩 ペンペンペチン Copyright 末下りょう 2019-07-01 20:20:26
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