メモ
はるな


私たちは際限なく強欲になり、最早物ごとが動く前にそれを感じようとさえする。
体を動かさずに、心だけ震わせたいと思うのだ。皮膚がものすごく厚くなってしまったから。
ちぐはぐな存在をしてかけ離れていく自我と実感を、騒音と振動で埋める、ちょっとした違和感を処理していくAI、(しないで)、も、ノイズとして。

世界があり、自分があり、そのあいだに言葉がある。
草木と同じように、育ち、枯れ、時々色づいたり、場所によって咲きかたが変わるもの。
それはときどき触るだけでかぶれるように毒だけど、多くの場合は生活を支え、もしかしたら良い衣服のように使うことができる。
世界だけでも、自分だけでも、言葉はあらわれてこないので、そのどちらもをおおいに味わうことがわたしたちの本当の理由だ。個々に意味はなく、あらゆる方向に無価値だけれども、生まれてきたからには、生きたり、感じたりして良いのだ。

書くのは最後でいい。

あなたが世界をみたり、きいたり、傷ついたりしているあいだ、世界もあなたをみたり、きいたり、傷ついたりしている。なにも存在しない場所に存在することはできない。あるものに触れることが大事だ。
書くのは最後でいい。世界があり、自分があり、そのあいだに言葉があるのを知ったあとで。


散文(批評随筆小説等) メモ Copyright はるな 2019-06-23 05:48:18
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