ゆがんだ月
あおいみつる

夜空を見上げると、ゆがんだ月が送電線に引っ掛かっていた。
街灯に群がる蛾の鱗粉が飛び散り、幻想的に宙を彩色していた。
星空は女が化粧をする様に嘘のように広がり、眩暈を感じふと立ち止まった。
足元のアスファルトに目をやると、ムカデの死骸を蟻たちが運んでいる。
夜は昔から魅惑的かつ魔力的な力を持っていて、人を知らず知らずのうちに誘惑し虜にする。
いつも理想と現実はかけ離れている。
今夜のゆがんだ月が現実なら、理想的な月を待てばいい・・・そう思った。



自由詩 ゆがんだ月 Copyright あおいみつる 2019-06-15 10:55:28
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