最果てに咲く蓮
高原漣

誰も知らない工場で換気扇が風と遊んでいる

忘れられたワセリンガラスが朝日に炙られている

埃にまみれた大気が分厚く層をなして

なぜ此処にいるのかわからないまま

永劫に中二階メザニーンに閉じ込められる

突っ立ったまま号泣する道化は蒼い血をながす

滴る血液は床に落下する前に仄暗く光を放って消えてしまう

ガラスの砕けた腕時計の文字盤を舐めまわす「それ」は、

茜さす虚空をふと見やる

美しき世界!

雀は囀るのをやめてしまった

魂なき身体が汚泥の中で藻掻きつづける

歪んだ表情はあまりにも無残で美しい大輪の花

恐るべき<<大蓮華>>

それは最果てに咲く蓮


自由詩 最果てに咲く蓮 Copyright 高原漣 2019-05-31 02:48:55
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