風のための散文詩
岡部淳太郎
ふけよふけ風よふけふらふらとふらつきなが
ら歩く背中を笑うように風よふけふきげんな
女のみにすかあとをひるがえしふせいみゃく
にくるしむ老人ののこりすくない頭髪をおび
やかしふるいぺえじをめくりふるい記憶をふ
るいわけて風よふけふかい空のそこから流れ
くだるようにふく風にふりこは揺れふりかえ
る時の狭間からふきおろすようにふく風にふ
くのすそはまくれあがり風にさわられてかす
かに欲情はふるえ風にさらわれてかすかな人
はふるふるふるえ綿毛をはこんで枝からはな
れた木の葉をはこんではなればなれの思い出
をはこんで風はふき窓をふきほこりを息でふ
きとばしひらりと舞い上がる鳥よひそうに舞
い散る紙ふぶきよひとりの日暮れに風はふき
ふたたびの夕暮れに風はふきへそのおをふき
すぎてへめぐる時をふきたおしふけよ風へち
まのつむじふきそくにふきすさびふきさらし
にふきまくりほろほろほころんで風は鳥をは
こんでうたをはこんでふるい鳥ふるいうたを
ふきはらい私のうたは風にふかれてうまれか
わる風にふかれてうまれおちるこれが私の風
とゆうごうしたあたらしいうたなのか明日は
とてもよくはれわたった風の天気になるだろ
う。ふっふふ、ふふうふ、ふふうふ、ふふう。
(二〇〇五年三月)
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