猫になりたい
立見春香


春の雨いつまで続く
猫になりたいかって
なれるものなら、と。


いっぴきの猫なんて
なにもできないし
力も無い
いっぴきの猫なんて
桜の枝から
飛び降りるだけ
花びらといっしょに

黒いむねには
自転車の鍵が刺さっている
それが一番自由な道をしめしてくれる
それさえあれば
いっぴきで行けるかもしれない

どこ?



が見たいと啼く
沸騰して大騒ぎをしている
ヤカンみたいなせっぱつまった声で
海、海、海、うみぃー!

海のない夜空に金平糖を探してみても
牡牛座のしあわせそうな笑顔があって
どうしてもそっちに
目が行ってしまうから

小さくていいから
海に連れて行ってよ
ってお願いしてみたけど
笑われたままでいいから
ってお願いしてみたけど
月にお祈りしてみても
啼いておねだりしてみても
ムダらしいから楽しみにして
ずっと待ってるね
ってそれだけ諦めないよ
って猫にさえなれれば
ずっと待っていられると思うんだ

でも、
いったいだれに
お願いすれば叶うのだったのかしら?
それだけ、わからないままで

猫になりたいなんて






自由詩 猫になりたい Copyright 立見春香 2019-03-31 11:36:45
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