見えない流れ星
高林 光

 夜明け前、西の空
 青白い月が微かに浮かぶ
 ぼくが吐き出した
 たばこのけむりと同じ色
 ゆらゆらとゆれているのは
 けむりでも月でもなくて
 ぼくの方だ

 月なんか見つめる前に
 自分を見つめなければと思っても
 捉えどころもなくなって
 もう、何がぼくのほんとうなのか
 見えなくなっている

 幼い頃のほんとうは
 いつもぼくの中にあって
 伝えなければならない想いは
 すぐに心からあふれてきたのに
 ひとつずつ言葉を知るほど
 ほんとうは逃げていった

 東の空が明るくなってきて
 もう星なんかひとつも見えなくなって
 下弦の月だけがうっすらと白く残っている

 でもぼくは
 まだどこかで信じてるんだ
 ぼくのほんとうは
 ぼくの中にしかないんだって

 この身体をあなたの側に
 連れて行ってくれる流れ星は見つからないけど
 太陽の光に隠された
 見えない星たちの中で
 心だけは繋がっているんだと
 どこかで


自由詩 見えない流れ星 Copyright 高林 光 2019-03-28 13:12:14
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