お金なんていらない
ベンジャミン

(お金なんていらない)

昨日、100円のおにぎりが買えませんでした。
財布の中には104円あっても、
税込み105円のおにぎりが買えませんでした。
コンビニの店員さんは残念そうで、
僕はそんな店員さんが可哀そうで、
50円のカステラパンを2個
お会計を2回にわけて買いました。
店員さんはとても嬉しそうに、
パンをレジ袋に入れながらにこにこしていました。

(お金なんていらない)

ある日、不治の病にかかった人と知り合いました。
その人は僕よりもうんと若くて、
8000万円の手術費用があれば助かるそうで、
僕は自分の生活費から、出せるだけの金額を出しました。
「わたしがもし助からなかったら、わたしの分まで生きてくださいね」
その人は言っていました。
8000万円は集まり、手術も無事に終わりましたが、
僕はその人の分まで生きなければならなくなりました。

(お金なんていらない)

人生に絶望して、自殺しようと思いました。
なけなしの貯金をおろし、生命保険を解約して、少しだけ贅沢をしました。
そんなに迷いもせずに、ありったけの薬を飲みましたが、
それでは足りなかったようで、助かった僕は笑い転げました。

それから数ヶ月たちました。
助かった僕は、
助からなかったその人からのメールを思い出します。
「元気になって戻ってきたら、会えるといいですね」

最近外へ出かけられるようになり、同じような言葉をもらいます。
「会えてよかったよ」とか「元気になってね」とか、
ようやく仕事を探しはじめました。

(お金なんていらない)

僕は出会った人たちに、また会いたいと思えています。

   


自由詩 お金なんていらない Copyright ベンジャミン 2005-03-30 06:24:17
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