ほかのどの木でもなく
佐々宝砂

からたち
くわ

くすのき
木を割る
ナタは少し重いくらいがいい
そういうことはきちんとわかるが
なにがほしいのか
わからなくなって久しい

からまるツタは
ていかかずら
あけび
へくそかずら
すいかずら
ツタは古く太くなってもやわらかにしなり
簡単に切れてはくれない

はっきりとしない記憶の滓が
鼻の奥でつんとする

火を放つ

くすのきはくすのきの
からたちはからたちの
炎あげ煙あげ
匂いたちこめ

いまほしいのは杉の木が焼ける匂い
わたしの身体の芯
捨てようもない中心にあるなにかと
組成が同じだと思う煙
ほかのどの木でもなく
杉の木の


自由詩 ほかのどの木でもなく Copyright 佐々宝砂 2005-03-29 22:01:51
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