VOICE
もとこ

あなたは少しだけ震える声で
言葉を世界へ解き放っていく
それは遠い未来の記憶だ
空のこと、風のこと、涙のこと
夕焼けのこと、無くした恋のこと
あなたが生まれた朝のことだ

そんなことは無駄だと誰かが言う
くだらないし何の意味もないと
彼らは否定するために否定する
空っぽの器を虚栄で満たすために
そんな彼らの身体は穴だらけで
あちこちから嘘が漏れ出している

だから気にする必要なんてない
失い続けるだけの人たちなんて
あなたはやっと卵の殻を破り
小さな窓から顔を出したばかり

俳優のような声量はない
歌手のような美声でもない
自信もなければ確信もない
だけど伝えたいことがあるなら

夜の中を漂っているあなた
教室の隅に隠れているあなた
自分を傷つけ続けるあなた
人の海で孤独に溺れるあなた

あたしは言葉を待っている
飾らない剥き出しの言葉を
どうか、あなたの声を
あたしに聞かせてほしい


自由詩 VOICE Copyright もとこ 2019-02-18 22:24:09
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