VOICE
もとこ
あなたは少しだけ震える声で
言葉を世界へ解き放っていく
それは遠い未来の記憶だ
空のこと、風のこと、涙のこと
夕焼けのこと、無くした恋のこと
あなたが生まれた朝のことだ
そんなことは無駄だと誰かが言う
くだらないし何の意味もないと
彼らは否定するために否定する
空っぽの器を虚栄で満たすために
そんな彼らの身体は穴だらけで
あちこちから嘘が漏れ出している
だから気にする必要なんてない
失い続けるだけの人たちなんて
あなたはやっと卵の殻を破り
小さな窓から顔を出したばかり
俳優のような声量はない
歌手のような美声でもない
自信もなければ確信もない
だけど伝えたいことがあるなら
夜の中を漂っているあなた
教室の隅に隠れているあなた
自分を傷つけ続けるあなた
人の海で孤独に溺れるあなた
あたしは言葉を待っている
飾らない剥き出しの言葉を
どうか、あなたの声を
あたしに聞かせてほしい