right trap
竜門勇気


するのはしないから
差し出し合う苦痛で
笑い合う
するのはね、しないからだよ

夏の終わり頃
ふたりでキャンプに行ったこと
おぼえてるかい
僕が16歳で君は・・・ずっと年上だった
僕のポケットにはナゲットが入っていて
君のリュックには太陽が入っていた
そんなことはありえないよな
太陽なんてどうもそぐわないよな
でも僕はそうやって思い出すんだ

するのは、しないから
欠けてるのはどんな味
探し合う
するのはね、しないからだよ

見たこともない
大きな虫がそこらを這ってた
覚えてるかい
僕はじっとそいつを見てた・・・君が指にそいつを捕まらせて笑った
誰かがそこにいてほしかった
君もその虫も言葉に出来ないほどきれいだった
虹色に光が反射して
どんな夜に見る夢よりもきれいだったんだ
どんな夜に見る夢より今、もう一度見たいと思ってる

するのは、しないからだよ
すべきことを僕がしなかったから
探し合う あの日君が先に見つけた
私がするのは、君がしないからだよ

手をつないで
明かりに様々な生き物が集まるのを見てた
君はリュックを開けて
ないしょだよ、と言って飲み物をくれた
ぬるくなったビールの飲み残しを
大ぶりのガラス瓶にいれて
何かを継ぎ足した
それを木のうろに流し込む

夏の終わり頃
ふたりでキャンプに行ったことを
思い出すことはないかい
僕とふたりで
たくさんの秘密をつくって
たくさんの秘密をみたこと
おぼえてないかい

世界に秘密をつくって
世界の秘密を見たこと
おぼえてないかい
おぼえてないかい



自由詩 right trap Copyright 竜門勇気 2018-12-23 06:14:42
notebook Home 戻る