走り抜ける街を
坂本瞳子

少し怖くなって
駆け出した

他人のことを
ジロジロと見たりしてはいけない
それくらいのことは
分かっている
けれど見てしまったのは
決して見とれた訳ではなくて
動きが怪しかったから

自らの腰のまわりで
手をぶらぶらさせたりして
気づいたときにはあちらもこちらを見ていた
目が合ったと認識できる前に
目を反らした
ちょうど曲がった道に入ると
人気がなくて
ついてくるのが分かったから
駆け出した

冬の始まり
厚手のコート
駆け出すと汗をかいた
手袋の中の手が湿っていた

もう振り向かない
振り向いてまだ付いて来ていたら
怖いじゃないか

ウチまではまだ少しあるけれど
振り向かずにそのまま突っ走れ
買い物なんて明日でいい


自由詩 走り抜ける街を Copyright 坂本瞳子 2018-12-17 21:25:08
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