ビニール袋いっぱいの
由木名緒美

透明なビニール袋に夜闇を包んで抱きすくめたい。耳梁から泡になって消えていく音楽のように、この部屋に息をしてる筈の形容しがたいもの/ほら、私の爪先に侵入していながら体温は南極の氷に閉ざされてしまう。いくら掘り進めてもそこにはもう何もなくて、真空/という名ばかりの抜殻があるばかり/

     「君」はどこにいるのか
         脳裏に温かく発する残像の始点はどこから?
 
     朝も夜もなくただ射貫く光だけが空間を縁取って
           焼ける喉を潤したい、「私」の輪郭が剥がれていく

密接させるんだ。命の管が結ばれ合う花糸と子房を分解して解いていく。それを私達は愛と呼ぶ。心許ない子犬が懸命に歩をすすめるような/誰もが純然と見守る必然/私は柔らかいスプーンとなって器をつかさどろう。それが営為というものではないの?/先端の崩れた幸福というものではないの?

      欠けている突端
            / 
             再生する大地の胚
 

今夜も闇は蛍光灯に融かされて私の五感を内側から灯すことを固辞する。照らされることは好きじゃない。一糸の行方が光に飲み込まれてしまうから。墨色も薄墨色も黄金色も朝焼けも、みんなみんなビニール袋に入ってしまえばいい。枕元で孔雀の夢をみよう。虹色に潜む闇を採集するんだ。たいせつなものはいつだって闇が匿っているからね。繋がるべきだった未来の移植先も昏睡の祈りもすべて夢の闇に仕舞い込んで。


自由詩 ビニール袋いっぱいの Copyright 由木名緒美 2018-12-08 01:05:40縦
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