roots
プテラノドン

自由はみな、無重力の選択圏内を潜行している。
そして、揺るぎない遅れを知る。

 しわくちゃな角笛を持ったサンチョ・パンサ
この身を一体此処からどこへ連れて行ってくれるんだい?
 二月の闇によろめく男は白い果実の匂いがすると
降ってくる雪を手ばなしでよろこんだ。
 一方で家の中にいた妹は 眠っている祖父の頭と
ほっそりとした自分の足首の間で澱む 若い記号を読んでいる
だけど本当にお前が探していたのは
背中で押しつぶしている 幸せとか不幸とか「私」の影
さりとてひるまないお前と 永遠に点らない街灯が重なる事で
静よりも長い、静かな「夜」が伸びていく
飽和した暗闇のはてで あどけない声が待ってるよ。
煙草の灰と粉雪にまみれたカーステレオから流れる
ワンエニシング―、に合わせたシャウトが
舗道の雑種犬の尻っぺたを叩くんだぜ。
奴等の声はコードから外れちゃいるが
愛の精神(スピリット)とかわりはしないよ
それは誰もの「Jr.」のフレーズ。その意味は
おれの25番目の辞書には「許されるなら」と記されている
 いつか母親は 誰のだか分りはしないと言って
どこかで拾ってきたカメラを娘に渡す
その何枚目の一小景では、男の掌は不機嫌なハンドルと
パンチドランクな愛を掴んでいた
撮られることはなかった(最後の一枚)
そこは 道や ことばのではずれたところの
誰も踏み込んでいないまっさらな雪の前で
彼女はかがみ込んでいる。その後姿に
男は千の接吻を送りながら去っていったんだ
―何のために?―
自由が、溶けないためにさ!


自由詩 roots Copyright プテラノドン 2005-03-25 01:22:20
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