そして彼はジュ・テームと
nm6

逆立ちをすることは、あまりない。けれど空を見上げることは多いし、できるなら見方を変えたいと思っている。溜息、ハア、でこの東京のネガティヴをまたひとつ、ハア、でふたつ、そしてたとえばお母さんは星になった、のように吸い込まれて凝固した、ネオンサイン。洪水する、ぼくら今や進歩的だが、照らして、やっぱり皆目まっすぐに歩けない。パリス、きみのうなじにあこがれた。




クラッカーの上の蝶。
やわらかく、ぼくはきみを食べてしまう。




側転をするときは、あまりない。けれど首をかしげることばかりだし、できるなら地球を止めたいと思っている。溜息、ハア、でこの東京に早歩く人々をまたひとり、ハア、でふたり、そしてたとえば嘘が本当になった、のようにきめ細やかな肌触り、欲望、ネオンサイン。漏水する、ぼくだけが今も楽観的だが、不利降り気味のきみはまっすぐに歩けない。パリス、きみの発音にあこがれた。




「そういうことだったんだ」
「いや、これは、違うんだよ、その、




その、


 」


クラッカーの
クラッカーの上の
クラッカーの上の蝶の
クラッカーの上の蝶の羽の


やわらかさの、ネオンサインの暖かく照らす東京。





逆立ちをすることは、あまりない。側転も宙返りも、しなくてもいい。忘れてしまっていいことも多いし、溜息だけを信じている人もいる。やわらかく、ぼくはきみを食べてしまう。クラッカーの上の蝶。


自由詩 そして彼はジュ・テームと Copyright nm6 2005-03-25 00:36:00縦
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