遥か
ミナト 螢
壁をよじ登るようにシーツを握って
呼ばれなくても会いに行きたい
深夜のラジオ放送を付けっぱなしにして
作ったアリバイが崩れる朝に
北上する台風より早く
辿り着きたい場所があった
点を結んで線に変えてきた
地図のどこかで笑っているなら
空腹を忘れた後で満たされる気持ち
今までにない目覚め方をした
何かを言いたそうな灰色の雲と
すれ違いながら強くなる風の音が
耳の穴を通過すると心が真空になった
時が流れて水溜りになる
その内側で泳ぐ髪の毛に触れるため
落ち葉をくぐらせて船に乗ろうよ
自由詩
遥か
Copyright
ミナト 螢
2018-08-24 13:37:53