ガヴォット
ヒヤシンス


  神様、どうか私を見捨てないで下さい。

 心に悲しみ満ちて、静かに訪れる夕暮れに頭を垂れる時、
 一人きり、森の奥深くにある小さな教会に足を運ぶ。
 
 重たい扉の向こうに見える木の十字架。
 三人並んで祈りを捧げている外国人の親子連れ。
 幼い二人の子供たちが母親の真似をする。
 席に座った私も彼女らの真似をする。
 
  神様、どうか私を見捨てないで下さい。

 程なく、親子連れは去っていく。
 私をどこまでも取り残して。
 醜く色付いた心の影を捨て去ろう。
 純白に、そして透明に。

  神様、私はやりなおせるでしょうか。

 外の気配を映し出すステンドグラス。
 私の心はどこまでも穏やかに。
 頭の背景にはバッハのガヴォット。
 厳かな雰囲気が胸を打つ。

  神様、私達家族をどうか見捨てないで。

 クールを纏った激情。
 一枚ずつ爪を剥ぐような、、
 目の玉を抜かれるような、、
 裏切り、陰口、理不尽、、

  神様、どうか私を見捨てないで。

 外はすっかり暮れていた。
 もと来た道を辿るつもりはない。
 森の中、明日への光を頼りに帰ろう。
 我が家に帰ろう。

  神様、ああ、私の神様、感謝しています。
 

  


自由詩 ガヴォット Copyright ヒヤシンス 2018-08-24 05:09:54
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