メシア
ホロウ・シカエルボク


きみの苦しみのことなどおれは知らない
たとえばきみが家を失ったとしても
(気の毒にな、でも、おれじゃなくてよかったな)
そう
思うだけだ
だから
おれはきみには手を差し伸べない


もしも
おれときみの立ち位置が逆になったとしても
おれは人前でつらい思いを吐露したりしない
「こんな目にあった、何もかも無くなった」
なんて
ぐずぐず泣いたりしない
だから
きみはおれに手を差し伸べなくていい


とかくこの世は
ヒューマニズムに脅迫されて
自分が痛くない程度の助け舟を
出さなきゃいけないような気分になる
他人の人生に手を差し出すなら
自分の人生を捨てる覚悟をしなくちゃいけないのに
ねえきみ、悲劇は無限にあるよ
無限の悲劇の前で
きみは選択をしながら誰かを助けるのかい


自由詩 メシア Copyright ホロウ・シカエルボク 2018-07-13 18:46:50縦
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