リンゴの何を知っているか
ブルース瀬戸内

私の好物はリンゴ一択です
リンゴのためならついつい
現実リンゴだけではなくて
仮想リンゴにも手を出して
無限の仮想世界に浸ります

仮想世界でたくましくても
現実世界では存外脆弱です

現実世界でたくましければ
仮想世界では脆弱になるか
もっとたくましくなるかは
試さないと分かりませんが
たくましいことが何なのか
脆弱であるとは何なのかと
再定義しようとすることに
時間を無駄に費やすような
クリンチ上等な人生だけは
勘弁願いたいとは思います
そんな時間をこそリンゴに
費やしたいとは思うのです

二秒で辿り着くはずなのに
二時間かかるのが人生だと
大賢者のごとく振る舞って
残るものは一体何なのかと
考えてみたくもなるのです

迂回戦略を採用することで
さらに多くのリンゴたちと
出会えるのなら話は別です

私の好物はリンゴ一択です
リンゴあってこその私です

仮想世界を堪能していても
時々仮想リンゴを目の前に
記憶の中のリンゴを想って
現実世界に引き戻されます

少し寂しく嬉しい瞬間です
あの食感は現実でこそです

リンゴの何を知っているか
分からなくなる時もあって
思わずリンゴに訊きたくて
かじるのを待ったりします

世界の何を知っているのか
分からないことと違うのか
同じなのかも分かりません

リンゴが目の前にあります
リンゴが目の前にあります
現実リンゴだと思いますが
仮想リンゴの可能性もあり
それをはっきりさせるため
勝手に別のことも仮託して
かじりまくってやるのです


自由詩 リンゴの何を知っているか Copyright ブルース瀬戸内 2018-04-16 19:39:52
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