春の悪夢
塔野夏子

僕は眠っていて夢をみていた
僕の夢の中で君が眠っていた
君は眠っていて夢をみていた
君の夢の中にたくさんのチューリップが咲いていた
するとふいに
赤いチューリップがひとつ
君の夢の中からにゅうっと出てきて
君の心臓を一口で喰べてしまったんだ
その赤いチューリップが
僕の心臓にも迫ってきた
ところで目が覚めた

目が覚めたこちらの世界では
きっと君はただうっとりと眠っているんだろう
その夢をたくさんのチューリップが
ただおだやかにふちどっていればいいな



自由詩 春の悪夢 Copyright 塔野夏子 2018-04-13 15:34:46
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