シの春
もとこ

屍たちが満ちる春に
シは色鮮やかに咲き乱れ
空っぽの青空の上からは
目隠しをしたまま立ち去った
半透明な人々の名を呼ぶ
少女たちの清らかな声が
弧を描きながら降ってくる

(世界の秘密を百葉箱の中に隠せ)
(チョコレート味の心臓を頬張れ)
(そしてヒリヒリする共鳴を求めて)
(互いの心を中指で掻き混ぜろ)

ボクらは生まれたばかりだから
美しいものたちの怖さを知っている
生は死が存在するからこそ
光の玉座に居座っていられる

それでもボクはキミのために
宇宙でいちばん小さな星になりたい
そして二度と目覚めないキミの寝顔を
永遠に照らし続ける夢を見たいんだ


自由詩 シの春 Copyright もとこ 2018-04-08 12:08:52
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