3月、雨と傘と小さな冬
ふく

3月
冬が力をしぼり 雨を雪に変えている
傘が折れるような風と一緒に

小指に乗るほどの車たちは
ワイパーをかしかし動かしながら
舌打ちをするように赤いライトがまばたき

雨雪の霧は左から右へ
スピードは早くなり 色は濃く
冬にまた閉じ込めるように
春なんて来ないように

やがて霧は雪になり 道行く人は冬の顏を
息が詰まるように下を向きながら
頼りなく振られる傘にしがみついている

窓からはひゅるひゅると外気
小さく白い眼差しをこちらへ向け
冬をまだ誇示したいらしい

いたずらに 雪は鳴り止んだ


自由詩 3月、雨と傘と小さな冬 Copyright ふく 2005-03-18 09:19:23
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