夜の空
鷲田

薔薇は真っ赤に染まっている
俺の花 一つだけの花
雨が一粒 二粒 薔薇の上に落ちる
空は泣いている 
理想を求めてお前も泣く
その涙は やはり湿っている
二つの要素を持った神の理
何も悪いことは起こっていない
何も良いことも起こってはいないんだ

ただ今はこのままにしておいた方がいい
タバコの煙も流れゆくままに
音だけが鳴り響き
言葉などは昔の時代に置き忘れてしまえばいい
何時だってお前は俺の味方だった
億万の人の群れが生きる中
過去を知っている者など一握りに過ぎない

瞳の奥には欲望が渦巻いている
真っ直ぐにこの現実を見つめることが出来ない
永遠にこの高揚が続く分けではないと
只管に祈りながら
鳴り響くピアノの音だけが
孤独を安らぎへと変えてくれる

もしこの香りが好みでなければ
現実にある空想をいっそ引き裂いてくれ
人々は破壊を求めている
この張りつめた空気を切り裂く
ナイフのような美しい音色を

今宵で世界が終われば
安らかな眠りは色も無く落ち着いているだろう
だが俺達にはまだ明日がある
機械のように動く世界がある
暗闇を恐れていてはいけない

まだ帰らぬ愛しい君よ
まだ帰らぬ愛しい君に


自由詩 夜の空 Copyright 鷲田 2018-01-14 19:59:52
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