去音
木立 悟



十二月は
窓にいて
ためらいながら三月を見る


とらわれのわけを知る名前
葉と葉のはざまにある名前
遠い火の列
風を咲かせて
すぎてゆく列


知らない花 なびくよ
手をとり 歩くよ
さよならの花と一緒に


合わせ手の葉に
したたる花 したたる花
緑の火


窓に浮く窓
沈む窓
光の布を軽く噛み
十二月は雨を見る


とらわれの指と指は触れ
雨と雨のはざまは咲いて
互いに互いを呼びあいながら
滴は滴になってゆく


三月の窓の
ひとつひとつに十二月はいて
生まれる花に
葉の波に
午後の光の手を振りつづける









自由詩 去音 Copyright 木立 悟 2005-03-16 17:39:19
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