フラグメンツ/雪どけ 三十一音
AB(なかほど)
北の空さよなら言ってふりかえる
南へ行こうとつぶやいて
もう一度振り返るから
梅の花にも似合わない如月の風
うつつ世の涙とけてく雪々に
歩く僕らの踏み跡もなく
うつつ世に生きてる海の魂火の
雪 降るげんろ なお 降るげんろ
明日降るはずの雨は雪になるという
いたたまれない気持ちの坂の
君の住む北の町では
もう静かに積もりはじめているのだろう
その夜はどっかの明日へつながって
さよならなんて言うもんかって
今日 雪 降り もう消えた
ことのはは 降ってはこない格子戸の窓
たぶんもう会えない君へ 山白く
今日も白く 白くまぶしい
白と見た灰 雪の上にこぼして
もうとけ消えることはないのです
世界地図に要冷凍ひとつずつ
融けてしまうのは僕らなのか
雪溶けのように君の中からも消え
誰かの鼻歌らいらと消え
誰かさんの幸せ花 匂う頃
北の森では最後の吐息
藻採り雪近づく炉端きゅうきゅうと
支度する祖母 乙女に変わる
手をつなぐ忘れたふりの手とつなぐ
小さい頃の君に会うため
どこからか冬越しバッタ飛んで来て
恍惚の目を奥からの灯に
ねえジミー ただそれだけで
まだ青い芝生の上に出ようと思う