フラグメンツ/雪どけ 三十一音
AB(なかほど)

  
 
北の空さよなら言ってふりかえる
南へ行こうとつぶやいて

もう一度振り返るから 
梅の花にも似合わない如月の風



うつつ世の涙とけてく雪々に
歩く僕らの踏み跡もなく

うつつ世に生きてる海の魂火の
雪 降るげんろ なお 降るげんろ



明日降るはずの雨は雪になるという 
いたたまれない気持ちの坂の

君の住む北の町では
もう静かに積もりはじめているのだろう

その夜はどっかの明日へつながって
さよならなんて言うもんかって



今日 雪 降り もう消えた
ことのはは 降ってはこない格子戸の窓

たぶんもう会えない君へ 山白く 
今日も白く 白くまぶしい



白と見た灰 雪の上にこぼして
もうとけ消えることはないのです



世界地図に要冷凍ひとつずつ
融けてしまうのは僕らなのか

雪溶けのように君の中からも消え 
誰かの鼻歌らいらと消え

誰かさんの幸せ花 匂う頃
北の森では最後の吐息



藻採り雪近づく炉端きゅうきゅうと
支度する祖母 乙女に変わる

手をつなぐ忘れたふりの手とつなぐ
小さい頃の君に会うため



どこからか冬越しバッタ飛んで来て
恍惚の目を奥からの灯に

ねえジミー ただそれだけで
まだ青い芝生の上に出ようと思う




   


短歌 フラグメンツ/雪どけ 三十一音 Copyright AB(なかほど) 2017-12-30 00:58:22
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