開いた手
アンテ


なぜ
目がさめるんだろうって
思ってた
まだ小さなころのこと
ずうっと眠っていられたら
幸せなのに

お金がかかるからよ
カナコさんがわらった
ブランコが行ったり来たりするのは
グルグル
回りつづけるよりも
エネルギーが
少なくてすむのだそうだ

人間は
ときどき起きて
眠るためのエネルギーを
かせがなきゃならない

眠るしゅんかん
が好きだ
持ち上げられるような
上向きの力が
ふっとなくなって
宙に浮かぶ
だんだん透きとおって
それきり
なにも感じない

ねむぅい

カナコさんは
だんご虫みたいに丸まって
寝てしまった
ちっちっ ち
しゃあぁぁぁぁっ
わたしの家とはちがう音が
あちこちから聞こえる
目をとじると
胸がすーっとして
でもそれだけ
だれも持ち上げてくれない
とても気持ちよさそうな
カナコさんの
くちびるが

起きているわたし
眠っているわたし
行ったり来たりするうち
どっちが本当か
わからなくなって
とりあえず
今が正しいって
思ったしゅんかん
恐くなって
目を閉じることも
開けることも
できなくなる

でも
どっちかひとつしか
選べない

眠れないの?

首をふる

ねむぅい

おまじないよ
カナコさんが笑って
開いた右手の
小指から順番におりまげて
グーを作って
これが現実
逆の順番に指をひろげて
パーを作って
これが夢
それから
左手を出す
じゃあこれは?

目をとじる

現実でつかんだものを
夢ではなす
グーとパー
くりかえし
くりかえし

手はひとつじゃない
現実も
夢も
毎回おなじとはかぎらない

宙にうかぶ
透きとおっていく


自由詩 開いた手 Copyright アンテ 2003-11-17 00:52:15
notebook Home