あずさ35号
吉岡ペペロ
あずさ35号に立って乗っていた
二組のサラリーマンがそこで酒を飲んでいた
プロポーズに失敗したかも知れない話
酒がよわくなった話
家飲みはもうからだが疲れてて一缶飲むのに一時間かかるとか
上司に評価されていなくて役職に就けていないのに後輩が勘違いして自分のことを主任と呼ぶのが辛いだとか
おれは腰がいたくなっていた
おれのうちの玄関にともだちが石を投げる
その音が止まなかった
おれが万引きをしたからだ
一緒にいたともだちのお母さんが
おれのぶんも買ってくれたとばかりおもっていた
どうでもいいような話を聞いているとあのときの気持ちを思いだす
粗雑で不器用な空が雲をながしていた
車窓は夜の沿線の町あかりをながしていた
飲むなら寝ないでも酒を飲む
まだ話はつづいている