黄昏りんご
霜天

夕暮れに塗られたりんごが
夜更けに眠れないからと
朝をかじっている
どうにも力が足りなくて
上手く噛み千切れない

どうにかあがいてみたくて
こぶしを握り締めて
枕に丸い頭を叩きつけてみるけれど
自慢の赤みが少し薄れるくらいで
どこへも行くことが出来ないでいる


黄昏て、その部屋で
冷蔵庫の中で期待が固体になって
スプーンも歯が立たないそれを
火にかけると
部屋が真っ白になって
ゆっくりと溶けていく

立ち込めた煙に
消防車のサイレンが近づいて
それでも止めることが出来ない
赤い顔をさらに赤くして
部屋が溶けていくのを
緩やかに眺めている


暮れかけて
塗り分けられて
溶けきった部屋の中で
夕暮れの夢を見る
薄く崩れた遠くの自分が
本当は何色だったのか
誰も知らないし
知ることもない


黄昏の赤
染まる姿に


自由詩 黄昏りんご Copyright 霜天 2005-03-16 00:10:20
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