そのひとは
もっぷ

きれいなうそをつくひとでした
ぼくも苦手だと云い乍ら
わたしが飲めないシェリー酒を
こっそりひとりで飲むひとでした

きれいなうそをつくひとでした
ぼくの夢だと云い乍ら
わたしがせがんだ北国の
雪を一緒に見に行きました

彼のうそってきれいなうそで
だまされるのが好きでした

けれど
うそで生きているひとでなく
彼はわたしに求婚しました
うそでないことはすぐわかり
わたしは泣いて頷きました

チャペルは止して
神社も止して
ふたりで海に行きました
静かな秋の凪の日で
ピンクの桜花でけぶっていました


彼のうそってきれいなうそで
だまし続けてほしかった
最後のうそは風にことづて
死んだ とか



自由詩 そのひとは Copyright もっぷ 2017-12-05 16:07:02
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