ミスタードーナツ
やまうちあつし
ドーナツの穴に住み
植物や動物と会話する
周りを囲んだドーナツに
扉が開くことがあり
人が訪ねて来たりする
右手を上げて少しあいさつ
「おはよう」だったか
「おやすみ」だったか
どちらもおなじようなもの
私は祈る
早く帰ってほしいと
私は呪う
いつかまた来てほしいと
円い空の中を
太陽と月と風が横切る
星々が途方もなく長い手を繋いで
無限のように踊ってみせる
私のことを予言者と呼ぶ
あたらしい声
私のことを愚者と呼ぶ
なつかしい声
笑顔は泣き顔のようだと
動物が言う
落胆は希望のようだと
植物が言う
ドーナツの穴に住む