飛行機の夢
岡部淳太郎

飛行機の夢を見た
滑空する
雲の上の翼
その下にたたずみながら
許されずに在る 自らの境涯を
針のように感じていた

そんな 夢だった
朝の空気は変らずにひんやりとしていて
世界中の物音が動き出したのに気づいて
ひとり ポットに薬缶で水を入れる
暖まる 沸騰する
熱を持つ 液体となる
その様子を見ながら
なんて夢を見てしまったんだと
ひとり 浮遊しながら思う

そんな 夢だった
恥とも 罪とも
称される生に誰もが生きていて
飛び立つために
身を低く保っている
ある者はすでに飛び立ったのだが
ある者はまだ飛び立てないのだが
そんな 夢を誰もが見ている
ポットの水もお湯に変り
目醒めのために煙草に火を点ける
曇った窓の外は晴れ渡った空だ
そんな 夢のような
まぼろしの生活だった

目醒めて
外に出て
空を見上げると
飛行機が飛んでいた
滑空する
雲の上の翼
そんな 夢を明け方に見たことを思い出す
私はただ許されずに在る
何者にも罰されずに
ただ ここにたたずんで
空の中の
白い翼を見上げている



(二〇〇五年二月)


自由詩 飛行機の夢 Copyright 岡部淳太郎 2005-03-15 19:31:08
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