夜と爪
木立 悟






音の無い陽だまりの
小さな影をつまむ
紙と木と水の王国
やがて火へと向かう王国


失望の羽が一枚
ふたつにちぎれ 横たわり
夢遊病者の背の月
三時三十三分の月


痛みの波と魚の眠り
常に左の空腹を向き
星を砕く星の外套
水を失くした水音のなか


鐘と扉が交互につづき
夜の径に響いている
声は次々と雨に変わり
風を遠くへ押しやってゆく


火も葉も光も単位のように
数の後ろに並んでいる
雨粒の顔を
見ようともせずに


淵に沈み
暗がりをすくう手
爪にまぎれ込む見知らぬ星が
淡く淡くかがやいている



















自由詩 夜と爪 Copyright 木立 悟 2017-10-21 08:31:30
notebook Home 戻る