ミネストローネの秋
Lucy


母さんがせっかく作ったんだ食べて行け

父のひとことに逆らえず
しぶしぶ食卓についた君は
スープを一口
口に入れると
涙をこぼし
絞り出すような声で
ごめんなさい
と言った

いいから食べろと怒ったように父が言う
もう一口
飲み込んでから
小さい声でおいしいと言った

うん・・
とだけ言って
言葉もなく私も鼻をかむ


何度でもやりなおそう
なにもかもみんなやり直しがきくよ
半年間の音信不通がなんだというのだ
二十数年の子育ての間違いが
なんだというのだ
何度でも家族をやりなおそう

君はなんにも変わっていない
ミネストローネが好きで
ちょっぴり泣き虫で
ごめんなさいと言える子だった
小さい頃と


踏み出しても踏み出しても
空回りする君の門出が
今度こそ新しい道に繋がりますように
君の胸にも
今日の秋空が
晴れやかに広がっていきますように

ミネストローネの色をした
木の葉が風に翻る






自由詩 ミネストローネの秋 Copyright Lucy 2017-10-13 19:26:37
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