ある皇帝の物語
無限上昇のカノン

ある帝国の皇帝が夢で見た国
どうしても手に入れたくなった皇帝は
家臣に命じて船を出す
その国を我が物にするために
本当にあるうかどうかも分からない国のために
大掛かりな戦いの準備をし
意気揚々と船出する

いろいろな国を巡り
夢で見た国を大地を探すけれど
どこにもそんな国ははなく
月日だけが無情に過ぎる
兵の士気は次第に下がり
故郷の帝国を懐かしむ
皇帝は頑なになり
まだ見ぬ国をひたすら目指す
もう誰も皇帝のいうことをきく者はいない

ある日 家臣たちは皇帝の寝室に忍び込み
とうとう寝首をかいてしまった
遺体は深い海に捨て
故郷の帝国を目指して帰る
皇帝を乗せない船は船足早く
懐かしの大地を目指して走る
欲をかかなければ皇帝は今頃栄えた帝国で
孫にも恵まれ幸せな日々を送っていたものを

帝国は皇帝の帰りを待ちきれず
共和制に姿を替えて
兵士たちを迎え入れる
戦いに明け暮れていた帝国は
すっかり平和な国になり
花咲き乱れ
いつしか皇帝の夢に見た国となっていた


自由詩 ある皇帝の物語 Copyright 無限上昇のカノン 2017-10-09 22:20:44
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