出帆ー詩に励まされて
ひだかたけし
舟よ出帆せよ
独り魂の旅へ
強く強く己を保ち
震え震え嗚咽し
舟を出帆させよ
広大無辺の大洋へ
久々に暖房の入った喫茶店
お喋りの花が咲く
私は無言で聴いている
ざわつく人々の楽しみを
自らの足場の軋めきを
随分と遠くまで来ちまったなあ
何もかも失っちまった
あるのはこの壊れかけた我が身のみ
されど己の志すところあるならば
舟よ出帆せよ
内なる旅へ
強く強く己を保ち
畏れ畏れ忍耐し
舟を出帆させよ
未来未知の大宇宙へ
*
[人間よ、お前は宇宙の
縮小された姿だ。
宇宙よ、お前は遥かな果てにまで
流れ出た人間の本質だ。]
*笠井 叡 『遺された黒板絵』より