錨としてそれは重すぎもせず
コハル


空が鳥を食んでいる
大地が樹木を食んでいる
愛が私を食んでいる

口腔を歯磨き粉で満たせば
ガス室での緊張
その後に訪う弛緩が
菌と異国の灯火を
消失させるだろう

何枚もの便箋が
部屋のどこかで見張っている
父の拗れた疑念と
母の届かぬ失望が
とぐろを巻いて
周辺を焦がした
証人として

七年前の私は
あまりにも無力だったが
明日が怖いと怯えることは
なかったはずだ
あの頃より生きているのに
あの頃より死んでいる訳ないと
言い聞かせて
止まっていてはいけない


自由詩 錨としてそれは重すぎもせず Copyright コハル 2017-10-06 10:39:00
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