安室奈美恵さんに寄せて
秋葉竹

安室奈美恵が引退する
特に思い入れのある人ではないが
時代を創った類稀なる才能には
敬意を表する。

わが街にミニFM局なる遊び場あり
そこで毎夜 大昔の流行歌特集の回とか
今の現役演歌歌手がゲストの回とか
地元の焼肉屋の提供番組でたまに聴く。

出てくる演歌歌手は名前もしらず
それも名前も知らない大物先生の
コンサートの感動を語ったりする
その先生との出会いのエピソードとかも。

どうでもいいんだが
「よいぐれて」なんて歌詞を聴いて
少しはいいなと思ったりする
曲名は、忘れた。

彼女の引退ってどんなだろう
場末のスナックの営業で
歌を歌っていることは
現役なんだろうか。

ひるがえって歌姫の引退
やめるといっても1年は仕事をする
歌も歌うんだろうか
その歌に「こころ」はあるのだろうか。

彼女もたまには酔っ払ったりするのだろうか
その時「よいぐれて」の女性の歌を聴いたりするのだろうか
そしてそんな歌を歌ってみたかったって
酔いながらならつぶやいてみたりするのだろうか。

彼女もたまには「よいぐれて」
あたいも若いころは歌が好きでダンスが好きで
好きなだけで良かったの
安室奈美恵なんて「演」りたくなかったな、なんてね。

今が絶頂ならやめたくても
やめられないんだろう
他の時と隔絶した頂きが絶頂であり
「絶頂とは次の瞬間そうでなくなるから絶頂なんだよ」
とは誰のセリフだったか

その虹色の星の煌めきも
窒息寸前の真っ黒な不安も
足元が消えて無くなるほどの孤独も

誰ひとりあじわったことのない
めくるめくヤツだったんだ、きっと。

時には死にたくなるほどの。

それを幸せというのか
「よいぐれて」を不幸せというのか
それはいえない、ほんとうの、ーーー。


自由詩 安室奈美恵さんに寄せて Copyright 秋葉竹 2017-09-23 09:02:04
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