『九月四日。まるっと』
ハァモニィベル

『九月四日。まるっと』

    (作詩 ハァモニィベル / 原作 渚鳥)

   


この机の足下に

私の工作用の材料が入ったカゴが一個 ある。

それは 一人の人間の訪れを いまかいまかと 待っている。

季節の違うものは 押し入れの中に積んである。
それらは 灯をともされるのを待っているローソクみたいに。

カゴは 外側をコーンパイプの質感を持った肌で覆われているが、内側は地味な布張りで
〈木〉が沢山描かれたその模様をみるたび、大人になった今でもときどき思う

木立の中には何か別の物が内包されているような気がする、と。

床の敷物と、色もデザインも合わないせいで、
大きめのナイロンのバッグで
私はカゴを下からまるっと覆った。

後ろ髪をひかれながら、一本道をいちもくさんに奔ったときのような気持ち

バッグの模様は未だ美しい。


荒んだ冬木立の、
ありきたりで、埃っぽい街並みは
黒地に撒いたような
灰色の木の葉が、
ぜんぶ上を向いて プリントされている。

冬木立の中には何があるのだろうか?

木の葉は
木全体の縮図だと、
いつだったか、誰かに、習った気がする

灰色の木の葉が なんだか 物分かり良いようにも見えたりした。

離れ離れに寄り添う様な密度で
みんな上を向いた
散り散りの木の葉たちが

仄かに冬の夜を待っている。

   しゃらしゃらと、ぴったりひっそり

私の目にはそうも見えるし

まるっと覆ったバッグの中でも

木の葉たちは

ろうそくの灯のように、やはり

どっか浮き立っている。










.


自由詩 『九月四日。まるっと』 Copyright ハァモニィベル 2017-09-22 21:38:51
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
プチ企画作品または制作時工夫のある作品