あの遠景のイデアの狂った郷愁
mahdi

青年時代のとある地獄は、青いヒヤシンスの未熟なか弱い花々のようだった。

架空の庭園に咲いた憂いのヒヤシンス。

情熱のスイトピー 戯れのチューリップ 

あの限りない遠景には、あなたのトルソーが。

神々しく使い古された瓶のとなりにある。

邪悪な子供たちが、山頂の山羊たちを迫害する!

幻想を超えて、すべてを見渡す、あの超越的視点から、

わたしは三千の山々と、四千の川となった。

兜を脱いだ武士のように、

操を守るために殉死した貞女のように、

私は、無限の光となった。

焼け付く愛憎が背中にへばりついている。

愛の神バイラーヴァは、私のコメカミに銃を突きつける。

バイラーヴァは万有だ。

今日も、夜はあの方の手に手を重ねながらやすらかに寝よう。

そんな、人生はあまりにも儚く逃避的なのだろうか。

思えば、あの人の焼け付くような思い出が、私のすべてを貫いているではないか!

もはや、あの人は、あの人とは別人なのだろう。

たしかに焼きついたイデア。

漆黒の彼岸を漂流する、巨大な海の怪物よ!

あまりにも狂ったように嵐が吹くではないか!

墓地のそばに転がしてあったひとつの石がつぶやいた。

みんないずれは死ぬのさ! 早いか遅いかだ!

喉から焼きつくようなイデアの憧れへの渇きがこぼれた。

セメントに頭をぶつけた哀れな一羽の鳩。

信じろ!

雪が見ている。

雪が君の中の無をまなざしているではないか!

あの時あの人のさりげない一言が、絶対無を垣間見させた。

「偏差値の低い人が、高い人をだますんですよ!」


自由詩 あの遠景のイデアの狂った郷愁 Copyright mahdi 2017-09-19 01:04:07
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