名取物語 自称詩人のスープ
花形新次

肉が筋張っていて
とても硬いので
3日3晩煮込む必要があったが
とにかく煮込んでも
煮込んでも
出汁が出ない、旨味がない
変な灰汁が大量に出る以外は
美味くもなんともない
その上、くさい
非常にくさい
足の臭いがした

これを吐くのを堪えて
小匙一杯飲むと
自称詩人にならずに済むと
言われている
そのおかげで
この村にいた自称詩人は
みんな喰われて
喰った者も自称詩人には
ならずに済んだので
結局、自称詩人は
一人もいなくなった

大震災以降
2年間のことだ
名取の百姓頭の
茂松がそう言う




自由詩 名取物語 自称詩人のスープ Copyright 花形新次 2017-09-06 00:36:01
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