名取物語 自称詩人のスープ
花形新次
肉が筋張っていて
とても硬いので
3日3晩煮込む必要があったが
とにかく煮込んでも
煮込んでも
出汁が出ない、旨味がない
変な灰汁が大量に出る以外は
美味くもなんともない
その上、くさい
非常にくさい
足の臭いがした
これを吐くのを堪えて
小匙一杯飲むと
自称詩人にならずに済むと
言われている
そのおかげで
この村にいた自称詩人は
みんな喰われて
喰った者も自称詩人には
ならずに済んだので
結局、自称詩人は
一人もいなくなった
大震災以降
2年間のことだ
名取の百姓頭の
茂松がそう言う